ぼっちのひとりごと

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貞子ブランド最低作かもしれない映画「貞子DX」

日本のホラー映画は世界に誇れるジャンルだった。

アメリカにてリメイクされたり現在でも明らかに過去のジャパニーズホラーの影響を受けた作品が数多く存在している。

それほどまでにホラーというジャンルは世界水準で見ても日本は突出していた。

しかし現在ではその姿は見る影もない。過去の栄光どころか化石レベルになってしまった。

直近で良評価を得た「来る」でさえも映画としては面白かったがホラーとして見ると正直イマイチだ。

そういう意味ではホラー映画として高評価を受けた作品は下手をしたら10年近く遡らなければないのかもしれない。

先日「それがいる森」を観てきたがこちらは記事に書いた通りホラーではなくコメディ映画であった。またホラーというよりはモンスターパニックものだったので評価基準も変わってくる。

そんな中公開されたのがリングでお馴染みの貞子が登場する作品「貞子DX」だ。

監督は「99.9-刑事専門弁護士-」の木村ひさし監督。今回初めてホラー映画作品の監督を務める。

~あらすじ~

謎の不審死が全国的に発生している中、巷ではそれを見ると24時間で死ぬと言われる「呪いのビデオ」が原因ではないかと囁かれていた。主人公の「一条文華」はIQ200の天才でありインフルエンサーでテレビの番組に出演し、人気霊能力者の「Kenshin」と呪いのビデオについての討論を繰り広げる。その後文華はKenshinから呪いのビデオのコピーを「本当に呪いがないというのなら君が解いてみせろ」と渡される。家にビデオを持ち帰った文華だったが妹の「双葉」が興味本位でそれを見てしまう。妹を救うため文華はひょんなことから出会った前田王司、SNSのフォロワーである感電ロイドと共に呪いを解明しようとする。

 

はっきり言うと本作はホラーとしてはクソ映画だ。これまでに公開された貞子ブランドの中では最低レベルといっても過言では無い。

他の貞子作品は出来が悪いものの褒められる箇所はいつくもあったのだが本作は多くて1つという体たらくだ。

悪いところはいくつもあるのでネタバレも交えつつそれを挙げていきたいと思う。

1.ずっと続く緊張感のない雰囲気

ホラー映画で一番重要と言っても過言では無いのは雰囲気だ。ジャパニーズホラー全盛期では全体的に静かで暗い雰囲気がジリジリと忍び寄る怪異の不気味さや恐ろしさを際立たせていた。

洋ホラーでよく見るのは序盤に明るい雰囲気を出し徐々に不穏な空気にしていくことで落差を作り出し恐怖を演出するというものもある。

今作はギャグ描写やコメディ描写が多いのだがそれをホラーシーンにまで持ってきてしまうため恐怖を感じることができない。

この原因となっているのは前田王司というキャラクターだ。こいつさえいなければ本作はもっとマシになっていただろう。ギャグ・コメディ描写のほぼ全てをこのキャラクターが担っているからだ。メインキャラクターである王司はほとんどのホラーシーンに登場するせいでギャグが差し込まれてしまい緊張感が生まれることがない。

本来ならばギャグシーンとホラーシーンはメリハリをつけるものであるのだが今作はそれが一切ないため恐怖に繋がっていかないのだ。

2.間抜けな死に方や貞子(?)の動き

怪異の恐怖を直接表現する方法の1つが犠牲者の死に様だ。過去のリングシリーズでは犠牲者は大きく口と目を開き恐怖に顔を歪めながら死ぬという見ている我々も恐ろしく感じる壮絶な死に方であった。

しかし今作の死に方は犠牲者は目に見えない何かに首を締められどこかに引き摺られながら前転をして死ぬという間抜けな死に方だ。ちなみに前転をしている理由は貞子に頭から井戸に引き摺り込まれているからのようだが傍から見ると酷く間抜けに見える。

恐らく本作が「呪い」と「ウィルス」両面で主人公達は捜査しているためそのミスリードとして使おうとしていたのだろうがもっとやりようがあったのではないか?と思った。なんなら死に方はリングの死に方そのまま使えばいいのでは…?

次に貞子(?)の動きだ。なぜ(?)をつけているのかというと人によって貞子が別の身近な人物に見えるからだ。主人公には妹に見えており、王司には元カノ➞主人公に見え、妹には親戚のおじさん➞親友に、母親には死んだ父親に見える。ちなみにこの理由は特に本編では語られることはなかった。

そしてその貞子の動きは体をゆらゆら揺らしながらたまにプルプル震えるとかいう「それのいる森」の宇宙人みたいな間抜けな動きをしていた。マジで怖くない。舐めてんのか。

怪異の動きは人に恐怖を与えるのに一番手っ取り早い方法だ。人間ではできない動きをしたり敢えて微動だにしないことで次に何をしてくるのかわからない不気味さを演出したりとホラーにおいてはとても奥が深いものだ。ここの演技指導はしっかりしてもらいたいと思った。

3.24時間後に死ぬという設定

根本的な話になるのだが24時間後に死ぬという設定が足を引っ張っているのではないかと思った。

恐らくであるが本作は24時間で死ぬ設定にすることで話にスピーディーさを生み、ジェットコースターのような急展開続きのストーリーにしようと思ったのであろう。しかし正直な話別に急展開などはなかったしむしろ話の浅さを際立たせるだけであった。

猶予時間を短くしてしまったせいで情報収集が誰でも簡単に見つけてこれるような情報ばかりで呪いの謎を解こうとしているため貞子の呪いについての深みが全く生まれることはなかった。

また24時間しかないのに物語終盤まで「呪い」か「ウィルス」か引っ張ってしまったのも良くなかった。中盤くらいにサクッと霊能力者をウィルスとは思えない方法で退場させ「どう呪いを解くか?」という話に持っていくべきであったのではないか。

結局死までの猶予7日は死の呪いを解くには短いが死の恐怖に耐えるには精神的に長いという絶妙な日数であったのだとわからされてしまう結果となった。

4.呪いの解決方法

これが本作の浅さを一層際立たせるものとなってしまった。その解決方法は呪いのビデオを見てしまったものは24時間経つまでに呪いのビデオを再度見るというものだ。これを毎日行わなければならない。ソシャゲのデイリーミッションかよ。

そもそも根本的な解決になっていないしEDの主人公達を見ると完全な呪いの解き方を探そうとしている様子は一切ないように思えた。これがIQ200の解決法なのか…?

これも猶予期間を24時間にしてしまった弊害であると僕は思う。情報収集の時間を取ることができなかったため応急処置的な方法しか見付からず根本的な解決を投げてしまう結果となった。

せめてこの方法を中盤に見つけて終盤は呪いを完全に解く方法を見つけるというストーリーにすればよかったのだが…

ていうかスピーディーかつ急展開続きのストーリーってそういうもんじゃねぇの????

 

他にも色々言いたいことはあるのだがとりあえずこんなものだろうか。ちなみによかったところはキャラクターの癖の強さかな。ホラーじゃなければね…

貞子DXはホラー映画好きは見る価値のないクソ映画なので他の映画に金使った方がいい。カップルにはいいんじゃない?しらね。