ぼっちのひとりごと

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盲目の少年が愛する者の為に戦う...不遇の名作「アビスレイジ」

本日10/15にweb漫画サイトジャンプ+にて「マッチョグルメ」の作者である成田成哲先生の新作「筋肉島」の連載が開始された。

タイトル的にコメディ系かと思いきや真面目に筋肉や筋トレ方法について語っており、少々シリアスな雰囲気が漂っていた。前作よりも画力は明らかに上がっており筋肉がより美しく描かれていた。また一つ毎週の楽しみが増えて嬉しい。

本日はそんな「筋肉島」の作者である成田先生の過去作である「アビスレイジ」について語っていこうと思う。

~あらすじ~

主人公である盲目の少年「忍」は深淵新陰流という古武術を学んでおり、その師匠の娘である「美琴」との恋愛関係を育みながら穏やかに過ごしていた。しかし、ある日突然「真神」と名乗るスキンヘッドでオネエ言葉を話す男が現れ、師匠と忍を圧倒し美琴を連れ去ってしまう。忍は美琴を取り戻す為に師匠の父親の下で修行を積み、真神が運営する凶悪犯や極悪人を収監した「監獄島」にて強者との死闘を繰り広げる...

全8巻。(1-3巻は紙の本があるが4巻以降は電子版のみ)

本作を僕が不遇と称したのは4巻以降が電子版になっていることが理由である。ぶっちゃけた話1-3巻まではウォームアップみたいなもので4巻からが本番であるにも関わらず単行本の売上が奮わなかったことが原因で電子版のみとなってしまったのだ。

僕は基本的に漫画は紙で揃えたい人間で、部屋には大量の本が本棚の上に山積みになっていても関係なくどんどんどんどん買い込んでしまうレベルだ。もう半分病気かもしれない。そのため紙の本が出ないと知って本当に残念に思った。

 

あえて最初に語るが本作のバトル描写は正直迫力に欠けている。バトルの解説は他の作品よりより科学的・専門的にされておりレベルが高いものであったがバトル自体の描写は躍動感がなく、特に序盤はかなり淡白でバトル漫画としては致命的なレベルだと思った。だが後半につれてかなり改善されており、特に真神所長とのラストバトルは最初から最後まで見応えのあるものであった。

 

本作の魅力は「キャラクター」と「ストーリー」である。この2つはマッチョグルメの時点で片鱗は現れていた。

魅力的なキャラクター

漫画で重要な要素の1つはキャラクターだ。バトル描写がどんなに良くてもキャラクターに魅力がなければ漫画としては弱くなってしまう。アビスレイジはバトル描写はイマイチだったがキャラクター作りに関しては補って余りあるレベルだと個人的には思っている。特にラスボスの真神所長に関してはビジュアルもさることながら、性格、信念、人格を形成するに至った過去等、読者を魅了していた。(真神所長の過去はジャンプラ内のコメント等で大バズりした。)

真神所長だけでなく、一撃必殺を信念としている監獄内最強格の「拳聖」遠藤や主人公の相棒でビビりだが義理堅いヤクザの下っ端の佐々木、主人公の味方であり囚人でありながら監獄内のコントロールも行える「興行師」貴美島等多くの魅力的なキャラクターが描かれている。

単純明快だが濃密なストーリー

アビスレイジはストーリー自体は単純明快だがその展開に持っていくまでの過程、キャラクターの人格を形成する過去、本作のメインテーマである「愛」に対する主人公と真神の主張の違い・対立を濃密に描いている。

前項でも語ったが真神所長の過去はジャンプラで大きな話題になるほどの人気のエピソードであり真神所長が「愛」に固執する理由が詳細に描かれている。

僕が特に好きだった展開は美琴が死んだという嘘を忍が吹き込まれ真神に復讐を誓うのだが、真神に「ある相手を殺したら私があんたと戦ってあげるわぁ」と言われ、戦う相手が殺された筈の美琴だったという展開。

忍は前述した通り盲目であるため相手が誰かわからない。美琴も真神から「制限時間いっぱいまで忍ちゃんにあんたってことがバレなければ忍ちゃんを自由にしてあげてもいいわぁ」と約束しているため、正体がバレないように忍から攻撃を受けても声を押し殺し絶対にバレないように戦うというものだ。

途中までは上手く戦っていた美琴であったが、ある動作がきっかけで忍に美琴であることがバレてしまい戦闘は中断。真神は呆然とする忍に対し「恋人を殺そうとするなんて歪んだ愛の形もあるのねぇ!!!!!」と罵倒する。しかし忍は美琴に対し「愛してる!!!」と声をかけ「私も!!!」と美琴もそれに応える。真神はそんな2人のやり取りに明らかに苛立つ顔をしていた。2人の愛を嘲笑うつもりが2人に愛を再確認させてしまい逆効果になってしまったことが印象的な展開だった。

 

ストーリーについてはもっと語りたいところがあるのだが多量のネタバレが含まれるので控えるがとにかく心を抉られるような内容や思わず胸が熱くなる展開が大量に用意されている。残念なことにそれは紙の単行本ではない4巻以降なのだが...

 

アビスレイジの総評としてはバトル漫画としては物足りないがキャラクターの魅力やストーリーの濃密さは素晴らしい作品であると僕は思った。

巻数が8巻で半分以上が電子版なので安く購入することは難しいと思うが後悔することはないと思うので気になったら是非読んで頂きたい。