サイコサスペンス漫画の傑作「ROUTE END」
最近は暗いニュースが多い気がする。
とは言っても僕は録画したアニメやドラマくらいしかテレビは見ないのだが、Twitterやまとめサイトなどで見かけるニュースは夢も希望も持てないものばかりだ。こんな世の中では絶望して自殺してしまう人も出てくるだろう。
現に日本では年間2万人以上の人々が自殺をしている。特に男性は女性の2倍の人数が自殺しているらしい。
大変申し訳ないのだが僕は自殺している方々の気持ちが正直分からない。いや、なんとなーく「そりゃ自殺もしたくなるよな...」という気持ちはあっても実際に行動している人がいるのが信じられない。
僕は決して裕福な暮らしは出来てないしぼっちなので彼女もいない。友人とはよく連絡は取るが片手で数えられるくらいしかいない。貯金もないしぶっちゃけた話将来のことは何にも考えてない。だからといって自殺するほどの絶望を感じたことは人生で一度もないと断言できる。お先真っ暗でも「まあなんとかなるっしょw」の気持ちで毎日生きているからだ。
なんでこんな話をしているのかと言うと、本日語りたい漫画のメインテーマが「自殺」だからだ。
ということで本日語る漫画は「ROUTE END」だ。
ジャンプ+で連載されていた作品で全8巻、作者は中川海二先生。
~あらすじ~
特殊清掃員の仕事をしている主人公「春野太慈」は恩人であり会社の社長の「橘」が巷で話題となっている連続猟奇殺人犯の「END」に殺されたことがきっかけで事件に巻き込まれていく...
本作はジャンプ+で連載していたとは思えないほど内容が重いのだが、ストーリーは重厚で謎解きものとしてもレベルが高く、描かれるキャラクター達の心情はグロテスクなほどにリアルで読者に訴えかけてくるものだった。
また、「性」についても描かれているのでマジでジャンプ+で連載するにしては対象年齢の高い話になっていると思った。
「自殺」という重いテーマ
本作のメインテーマは「自殺」というかなりセンシティブで重いものであり、メインの登場人物は自殺と深い関係がある。
主人公の太慈とその弟の真人は母親が、ヒロインである刑事の五十嵐は弟が自殺しておりその事が全員別々のカタチでトラウマとして残りそれが物語に大きく影響を与えている。自殺した人の親族のような「遺された人々」の心情も深く掘り下げられており、これが読者の我々にも刺さる内容だった。
また、「自殺」と「猟奇殺人」は一見全く無関係でありむしろ正反対のものに思えるがこの2つが大きく関係している。この2つの関係こそ連続猟奇殺人を解明していく鍵となっているのだ。
推理作品としても優秀
若干のファンタジー要素があるにはあるが我々読者の推理の邪魔になるものではなく(作品内の警察としてはたまったものではないが)伏線にしっかりと気付く勘のいい人ならば2巻でENDが誰かわかるかもしれない。
それくらい本作品はキャラクターの表情や言動・行動が細かい伏線となっているので油断することができない。僕も犯人がわかった後で読み返したとき、「あ、ここ伏線だったんだ...」と気付くシーンが何度もあった。
キャラクターの暗い過去
本作のキャラクター達は大なり小なり皆抱えているものがある。
主人公とヒロインは前述の通り親族が自殺しており、主人公の同僚の加藤と柳女も心にトラウマが残るほどの経験がありそれが原因で2人は「仕事場(人が死んで腐臭に満ちた室内)で性行をする」という異常な行動を取るに至らせている。
この過去とキャラクター達の考え方や行動への影響は理屈がきちんと通っているため強い説得力を持たせているのが本作の魅力の一つと言える。
予想しえない衝撃の真相
ENDを捕まえるまではウォーミングアップであり、ENDを捕まえた後が本番といえる。
これに関しても伏線はいくつかあったが正直マジで気付かない。答えが提示されてから初めて気付くレベル。
それぐらい衝撃的な内容を見開き2ページでENDが自供するという漫画としては最高の方法で表現されており、本当に鳥肌が立ったのと涙ぐんでしまった。
そして事件はさらに予想外の方向へと進んでいくのだった...
唯一のファンタジー要素
基本的にリアル志向で進んでいく本作であるがただ一つファンタジーの要素がある。それは橘についてだ。
語るためにあえてネタバレするが橘は何度死んでも中年の姿で生き返るという擬似的な不死身状態である。この手のサイコサスペンス作品はリアル志向で進行していくべきなので蛇足のように思える。
しかし本作においては橘というキャラクターは「救い」という役割のために必須のものである。特に最終回では橘がいなければあまりにも救いがない後味の悪い最後となってしまうので僕としては橘は必要だと思った。
ROUTE ENDは重厚なストーリー、随所に散りばめられた伏線、そして僅かなファンタジー要素を丁寧に調和して作られた素晴らしい一作だ。
中川先生は現在同ジャンルの漫画である「DYS CASCADE」を連載しているのでそちらも期待している。